HD650+HX-3の相性はどうなのか?
という点について、測定結果と自分の主観から結論をだしてみました。


読むのが面倒でしたら、一番下の【結論】だけ見てください。



まずHD650に以下3つのアンプをつないだ際の周波数特性の変化を測りました。

・SOUND DEVISES/HX-3
・RaySamuels/SR-71A
・GraceDesign/m902


【グラフ1】アンプによるHD650の周波数特性の変化


大体90〜100Hz辺りを中心として、HX-3の低音は1.5dB位音圧があがってます。

この理由は、実はHX-3の出力インピーダンスが200Ωと非常に高ことに起因していました。
(m902は1Ω程度ですし、SR-71Aは0.1Ω程度と低い値です。)



【グラフ2】HX-3の出力インピーダンス

200Ωと非常に高い出力インピーダンスです。
業務用らしく、インピーダンスの高いヘッドホンを効率よく駆動することを前提とした設計のように思えます。
(インピーダンスの高い業務用ヘッドホンとのインピーダンスマッチングを重視した設計)


ただし、出力インピーダンスが高いことの弊害として、電圧駆動から電流駆動へ近づいてしまう問題があります。

電流駆動に近づくと、ヘッドホンのインピーダンスに山谷があった場合、インピーダンスが高い部分の周波数では、
他の周波数よりも余計に電流が流れ込む形となり、その近辺のだけ音圧が高くなってしまう結果となります。

また、電圧駆動で適正に効いていた逆起電力による電磁的な制動の効果が弱まることから、
ブーミーな締りの無い緩い低音になる可能性があります。
(ヘッドホンはスピーカーほど電磁的な制動には頼っていないようですので、甚だしく緩い低音にはならないでしょうけれども・・・)


一方、HD650のインピーダンスは以下です。
HD650のインピーダンスが高くなる周波数は90Hz前後で、この辺りの音圧が高くなってしまうことが予想され、
この予想は【グラフ1】の結果とも概ね合致します。


【グラフ3】HD650のインピーダンス

HD650の共振周波数(f0:エフゼロと良く言われます)は、90Hz前後であり、インピーダンス値が上がっています。
このあたりの低音の量が特に多くなります。

HD650の場合、公称インピーダンス300Ωと値が高いのでまだ良いのですが、
インピーダンスが16Ωといった低い値を持つヘッドホン/イヤホンでは、ほとんど電流駆動同然になってしまいます。
するとより過激にヘッドホン自体が持つインピーダンス曲線に大きく左右されてしまい、
一般的な電圧駆動のアンプと比べてF特が変わってしまいますので要注意です。

一般的には、オーバーヘッド型のヘッドホンでは100Hz前後にインピーダンスの山があるので
「低音が増えてしまう」結果になるものと思います。
(シングルドライバーバランスドアーマチュアは、高域ほど右肩上がりにインピーダンスが上がる傾向があるので、
 高音が増える結果になります。)



【結論】
自分の結論としましては、スッキリした低音にしたい場合はHX-3はあまり向かないように思います。
逆に、もう少し派手な低音にしたい場合は、HX-3は良いかもしれません。
(電流駆動アンプにHD650をつないだ場合と似たような濃い音になってます。)

HX-3は2台目のアンプとしてはクセがあって面白いかもしれませんが、1台目としてはちょっと面白すぎなのかもしれません。


以上