HiFiMAN HM-801
(2010年1月23日新規作成) > (2010/5/29 カスタムイコライザの各バンドの設定範囲一覧追加)>(2010/6/19 IEMモジュールの記載追加)
その名のとおり、HiFi志向なDAPと思われます。
本体重量は実測で270gと重く、ソニーの初代カセットウォークマン並。
・・・なのでまあギリギリでポータブルの範疇という印象。
【写真1】外観
左:iPhone3GS 右:HiFIMAN HM-801
HM-801の厚みは25mm強くらい。相当に厚いです。
SDカードスロットあり。USBでPCと接続してDAC(USBオーディオデバイス)としても使えます。
【グラフ1】周波数特性 HiFiMAN HM-801(USB/DACモード)16Ω抵抗負荷時。
ローエンドは問題なさそう。(20Hz以下はまだ測ってませんので不明ですけれど)
高音は20kHzで4dB程ゲイン低下。・・・うーん。結構ガッツリ下がってますね。
パッと聴きで、「なんか低音基調」と思いましたのは妥当だったのかしらん。
【グラフ2】出力インピーダンス HiFiMAN HM-801
出力インピーダンスは予想していたよりも高くて18Ω程もある様子。
iPhone3GSの出力インピーダンスは2Ω程度であり、
iPhone3GSよりもイヤホン/ヘッドホンのインピーダンス曲線に相似した周波数特性の変動が発生しやすいことが予想されます。
つまり、ヘッドホンとの相性が発生しやすいということでありまして、あんまり望ましくないように思います。
インピーダンス曲線の凹凸が比較的激しい、バランスドアーマチュア型では特に注意と思われ。
【グラフ3】<参考>iPod touch 1stGen/iPhone 3GS
<簡単なHM-801の感想>
HiFiって言葉の厳密な定義は知りませんので、個人的にHiFiなアンプやDAPってどんなイメージよ?と言われれば
フラットな振幅/位相特性。出力インピーダンスがそれなりに低い・・・
といったような地味な要素をいかに真面目に考えて実装しているか、という点に掛かっていると思います。(賢くセンスの良い妥協の仕方、というのもあるんでしょうね)
個性とは正反対のイメージですね。(実装の方法は個性的かもしれませぬ)
そういう意味では、このHM-801は個人的な好みからは外れてます。
低音基調なのはメーカーの個性や主張なのかもしれませんが、主張よりも先に良いイコライザーを実装してユーザーの好みを反映できるようにしてよ
・・・・と、個人的には思うんです。
<投げやり調査: プリセットのイコライザの設定>(2010/1/28追加)
PlayFXは何をしているのか良く分かりまっせん。
HM-801のインパルス応答を測ってみたの巻<2010/5/25追加>
HiFiMAN HM-801のファームを0.17に上げました。
記念に測定しますた。
今回は、48kHz/16bitのパルス波(wavファイル)を負荷抵抗16Ωで再生したインパルス応答を、
EDIROL R-09HRで96kHz/24bitのwavフォーマットで録音し、これをARTAに入力して解析しました。
位相も測っときましょうね。
インパルス応答(ヘッドホン出力) | 周波数/位相応答(ヘッドホン出力) | |
HiFiMAN HM-801 | ![]() |
![]() |
【参考】LavryEngineering DA10 | ![]() |
![]() |
お気づきのように、HM-801の高域のゲインを落とすフィルターは、高域の位相にも影響を及ぼしています。
(これはアナログフィルターやIIRフィルターではある程度避けられないことです。)
ちなみにイコライザーをかけた例では、こんな応答になります。
当然ですが、他のDAPと同様にIIRフィルタでしょうから、イコライザーをかければ位相は崩れます。
やっぱ、自分はDAPとかアンプは出来る限り振幅/位相をフラットな特性にしておいて、
FIRフィルタで自由にイコライジング出来るのが理想だと思う次第であります。
(オーバースペックかつ、チャレンジングなHiFiって感じね。w)
設定が直感的でなくて難しい、という課題はあるでしょうけれど、DAPでも不可能では無いと思うんですよね・・・なんか無理なのかしらん?
なお、HM-801はファームver.0.17でもまだイコライザにバグがあり、
スライダーでは各バンドでプラスマイナス10段階選択できますが、実際には、なぜか2段階ごとにしか変化しません。
つまり2dBずつしか変化しない、というバグがあるようです。
これは個体差じゃないと思いますが、お時間のあるかたはお試しを。
カスタムイコライザの各バンド毎の設定範囲<2010/5/29追加>(@ファームウエアver.170)
他と違って、"1kHz +10"の低域の応答がおかしいです。(一律に2dB程低音がブーストされている)
3セット測定しましたが、いずれも同じであり、もしかしたらフィルターの設計に何かしらバグがあるのかも?
HM-801 vs. iPhone 3GS <2010/6/1追加>
いくつかの物理特性のみで比較してみる。
audibleかどうかは難しい問題なので出来る限り無視。(ヲイ)
ぶっちゃけ、外で使うポータブル機ですので、そんなにこだわってもなぁ・・・・という気もしますが、
現在のDAPの物理的な特性の一端を見てみるのもまた一興かと。
特に結論はありませんよ。うん。
<2010/7/4追記> インパルス応答の測定条件: Stimuli=48kHz/16bitSampling Pulse .wav file DummyLoad=16Ohm(1/4W 1%) Recorder=sony PCM-D50 (at 96kHz/24bit) 歪み@1kHzの測定条件: Stimuli=48kHz/16bitSampling 1kHz(-3dB) sine .wav file (generated by WaveGene in FFT optimized) DummyLoad=16Ohm(1/4W 1%) Recorder=sony PCM-D50 (at 96kHz/24bit) FFT=WaveSpectra 出力インピーダンスの測定条件: CLIOWINfw (stimuli=LogChirp) |
HM-801 | iPhone 3GS | |||
FR/Phase | ![]() ![]() |
![]() ![]() |
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【辛口謎ジャッジ】どちらもNG。 いきなりですが、iPhone、HM-801両方ともダメです。エッヘン。(超偉そう) HM-801は、良かれと思って高域のゲインを落としているんでしょうが、有り体に言わせていただければ余計なお世話です。 ヘッドホンメーカーのチューニングも存在しますから、余計に相性が発生してややこしいだけなのではないかと。 一方iPhone3GSは高域の位相が結構な勢いで遅れています。 でもまあ、個人的には、5kHz以上なので定位感などにも問題が出るとは思いませんが、冷徹に物理特性で見るならばダメダメですな。 |
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Distortion@1kHz | ![]() |
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【辛口謎ジャッジ】iPhone3Gの方が良好。 みたまんまで申し訳なし。しかしiPhoneでもまだ随分歪みやノイズを減らせる余地はあるのではないかと思います。ガンガレ。 |
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output impedance |
![]() |
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【辛口謎ジャッジ】iPhone3Gの方が良好。 出力インピーダンスが高いと、定電流駆動に近づいてしまい、 ヘッドホン自身が持つインピーダンスカーブに相似の音圧変動を発生させてしてしまうからです。 (ER-4Pのケーブルに抵抗を入れると、ドライバーのインピーダンスカーブに従って、高域の音圧が上がってしまうのと仕組みは同じ。) インピーダンス特性に起伏が多いヘッドホン/イヤホン(特にマルチドライバーのBA型イヤホン)を、 出力インピーダンスの高いアンプにつないだ場合は、(仮に出力インピーダンスが十分0オームに近いアンプを基準とするならば)かなり違った音になることが予想されます。 Shure SE530の例では、以下のようになります。 【SE530のインピーダンス】 ![]() ここで、 iPhone3GSの出力インピーダンスを2オーム。 HM-801の出力インピーダンスを18オームとすると、 出力インピーダンスがほぼ0オームのアンプと比較して、以下のような絶対的な音圧の変動を生じることとなるでしょう。
1kHzの音圧を基準として、相対的な周波数特性の山谷の増加は、 iPhone3GSでは、5kHzで-1.48dB程度の変動ですが、HM-801では-6.67dB程度も変動することが予想されます。 上は予想ですが、実際に測ってみたのが以下のグラフです。 【HM-801、iPhone3GSで再生した際のSE530の周波数特性の相違】 1kHzの音圧が同等になるように再生(stimuli=16bit/44kHz 60secLinearSweep) ![]() さて、この違いはaudibleか? ・・・という点については異論はあるとは思いますが、それなりに多くの人にとって違いが分かるのではないでしょうか。 (具体的には、HM-801の方が、高域が大人しく、こもった音に聴こえる。) |
IEMアンプモジュール(Game amp module)の感想<2010/6/19追加>
別売されている、IEMアンプモジュールを試してみた結果を以下に記します。
なぜ、IEM(In Ear Monitor)イヤホン用のアンプモジュールが、「Game amp module」とよばれるのか?は良く知りません。
ちなみに標準で搭載されているアンプモジュールはヘッドホン用であるため、IEMを使用する場合はこのIEMアンプモジュール推奨とのこと。
・・・正直なところ、
DAPなんだしイヤホンで使う人の方が多いのだから、最初からIEMモジュール搭載にしとけばいいじゃん?と思わずにはおれませんでしたが、
そこはまあ大人の事情もあるのかもしれません。適当に言ってますけどね。
それにしてもせめてオーダー時に選べるようにするとか、お金と時間のムダは無くして欲しいところ。
そしてこのIEMモジュール。
よく知りませんけれど、ゲインを落として、感度の高いIEMでもボリュームコントロールの向上と、ノイズフロアの低減を狙ったもののようですが
・・・合ってるかしらん?(いい加減すぎ)
さっそく組み替えて、測定などしてみましょう。
【写真1】IEMモジュールをセットするところ
プラスネジ2個はずして裏蓋をあけて交換。所要時間5分くらいです。
【グラフ1】IEMアンプモジュール使用時の出力インピーダンス(ヘッドホン端子)
赤:IEMモジュール使用時
白:標準アンプモジュール使用時
・・・・なぜこうたし?
IEM用アンプ搭載時は33.7Ω程度の出力インピーダンスの様子。
標準アンプカード使用時は約18Ωでしたから、出力インピーダンスは倍近く高くなる様子。
個人的にはちょっとイヤです。
理由は分かりませんのでさておき、
「インイヤーモニター用」ということなので、以下取り急ぎWestone3を使ってF特を見てみます。
【グラフ2】IEMアンプモジュール使用時のF特の変化(Westone3の例)
灰色:LavryDA10で再生時
赤色:HM-801+標準アンプモジュールで再生時
水色:HM-801+IEMアンプモジュールで再生時
うーん・・・ダメですやん。
【グラフ1】の出力インピーダンスから予想されるとうり、F特はそれなりに変化してしまいます。
このWestone3の場合は以下の【グラフ3】のようなインピーダンスを持っているので、
IEMカード+Westone3の場合では「1.4kHzあたりが目立つ」よりカマボコ風のF特になってしまいます。
このF特の変化を良しとするのかは各人のお好み次第だとは思いますが、
個人的には高域の音圧が落ちてしまう点が鮮度の点で好きではありません。
(1kHz基準で、低域、高域とも3dB程度変化しているので、違いを感じ取れる人はそれなりに居そうな気がします。)
【グラフ3】<参考>Westone3のインピーダンス
Westone3のインピーダンスカーブは
1.4kHzあたりと、4.5kHzあたりにピークがある、マルチWayらしいそれなりに複雑なものです。
【グラフ4】インパルス応答比較
インパルス応答波形 Stimuli=48kHz/16bitSampling Pulse .wav file DummyLoad=16Ohm(1/4W 1%) Recorder=sony PCM-D50 (at 96kHz/24bit) |
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HM-801 標準状態 |
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HM-801 IEM ampcard |
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<参考> Lavry DA10 |
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インパルス応答の波形は、標準のアンプモジュールとIEMアンプモジュールで、さほど変化は無い様子。(詳しくは以下のFFTで)
【グラフ5】上記インパルス応答をFFTして得た周波数応答
上:周波数応答(振幅)を比較
下:位相を比較
![]() |
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FFTしてみた結果でも、やっぱり振幅、位相ともにほぼノーマルと変わりはない様子。
なので、出力インピーダンス、歪み率(未実測)や、S/N(未実測)以外は、
IEMアンプカードは標準のカードと、まあそんなには変わらないものと予想しますわん。
<IEMアンプモジュールに関する俺結論>
マルチウェイのBA型のイヤホンに使うのは、上記のようなF特の変化が考えられるため、個人的にはお勧めしません。
(偶然にも、変化した音の方が良かった!という場合も有り得ますが、
設計で考慮してコントロールされているわけではないので、その確率は低いんではないかと思われます。)
現在使っているイヤホンの感度が高すぎてボリュームの調整に難儀していて、
かつダイナミック型イヤホンを使用する方には効果ありと思います。
(ダイナミック型のイヤホンは比較的インピーダンスカーブがフラット)
しかしまあ、昨今はマルチウェイのBA型のIEMの比率が多いでしょうから
有り体にいえば、あんまりお勧めできないアンプボードと思います。
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