SONY XBA-H3
(2014.1.5)

<外観>
16mmダイナミック型ドライバー1基と、バランスドアーマチュア型ドライバ2基(フルレンジ1基、スーパーツィーター1基)という構成だそうです。
MDR-EX1000やMDR-EX800STと見た目は似ているが、BA型ドライバーを搭載している分ハウジングが厚く大きい印象。ただし装着感は大差なし。
ケーブルは、平たいきし麺のようなタイプに変更されている。ソフトだし絡みにくいのは結構なことであります。

<測定結果>
1.インピーダンス
XBA-H3、MDR-EX1000、MDR-EX800ST、参考としてAKG K3003(これもダイナミック型+BA型のハイブリッドイヤホン)を1枚のグラフにまとめた。(グラフ1)

ダイナミック型のMDR-EX1000やMDR-EX800STは単純に5.5kHz近辺に1つの共振峰を持っているが、当然ながらマルチウェイのXBA-H3は複雑であり、加えてインピーダンスの値が周波数に依存しておおよそ28Ω〜130Ωと大きく変動している。
ここからXBA-H3は、アンプの出力インピーダンスによってスペクトルが大きく変化してしまうことが予想される。
具体的には、出力インピーダンスの高いアンプを用いると、7kHzをピークとしておおよそ2kHz〜10kHzの範囲が強調されてしまうことを意味する。
(ちなみにカタログ値の40Ωという数字はどこの数字なのか明確には分からなかった。)
XBA-H3のやんちゃぶりに比べると、MDR-EX1000、MDR-EX800ST、K3003のインピーダンス変化は緩やかなもので、さほどアンプの出力インピーダンスに対してシビアになる必要はないと思う。

(グラフ1)インピーダンス XBA-H3、MDR-EX1000、MDR-EX800ST、参考AKG K3003




2.周波数特性と歪み率(THD)
100dB SPL@1kHzにアンプ(m902使用)のボリュームを合わせた際の、周波数特性とそのTHDを測定した結果を以下のグラフ2〜5に示す。

◆MDR-EX1000とMDR-EX800STの相違点:
 MDR-EX1000はMDR-EX800STに比べると2kHz以上から高域が徐々に強調されていき、最終的には12kHzで5dB程音圧が高い。
 これは、MDR-EX1000の方がより「ハイ寄り」で高域に重点を置いた、(少し古風な)ハイファイ風であると言えそう。
他方MDR-EX800STの方は、高域を一段落として長時間聴き疲れないことを主眼としているように思える。
 歪み率(THD)については、理由は不明だけれどもMDR-EX1000の方が低域の歪みが10dB(約1/3)も少なく、100Hzで0.1%以下という極めて良好な数字。100dB SPLという非現実的な程大きい音量であることを考えると、この点はHi-Fiだなあと素直に納得してしまう。
 なお、歪み率について、人間の検知限界は何%からなのか?はっきりとした数字は自分は知りませんが(条件によっても様々でしょう)、100dB SPLでTHDが1%を切っているようなら、実用上全く問題がないと思いますし、検知も極めて難しい・・というか無理だと思います。。

◆XBA-H3とMDR-EX1000の相違点
 XBA-H3とMDR-EX1000の周波数特性を見比べると「かなり別物である」ことが分かるかと思います。
 まずXBA-H3は200Hz以下の低域がおよそ5〜6dB程度も盛られているし、4kHz近辺にMDR-EX1000や800STで見慣れない8dBくらいのピークがあります。更に加えて14kHz近辺に大きなピークがあり(これは閉管共鳴かはっきりしませんが)「これがスーパーツイーターなのん?」ということでっしょうか。
 総じていえば、XBA-H3はMDR-EX1000と比べれば「ドンシャリ傾向」と言えましょう。確かに実際派手なロックなんかの楽曲を大きめの音量で聴くと「ちょっとシンバル派手じゃね?」と感じるケースもありました。しかしこれはよく聴く楽曲や個人の好みの範疇でしょう。きっとその程度の欠点でありましょう。
 「ドンシャリ」というとHi-Fiにあらず、というご意見もあろうかと思いますけれど、例えばAKG K3003の周波数特性を見てのとおり、この程度は十分に許容範囲であると自分は思います。特に低めの音量で音楽を聴く人にとっては(等ラウドネス曲線から)このくらいのメリハリ」はあっても良いんじゃあないかと思いますよ、
 さてXBA-H3のTHDの方は、100Hzで0.3%程度、最も悪い2.5kHzで1.0%程度です。MDR-EX1000と比べてしまうと見劣りしますが(BA型はそもそもその小ささから非線形歪みの点で不利)、まあ上述のとおり知覚は難しいでしょうし、十分な品質だと思います。
 (繰り返しになりますが100dB SPLといった大音量で聴き続けたりしたら、すぐに難聴になっちゃいます)

(グラフ2〜5)周波数特性とTHD 100dB SPL@1kHz






3.まとめ
 意外といいぞXBA-H3。MDR-EX1000や800STが「低域にパンチないなあ」「ちょっと高域地味かなあ」と感じた人は試聴する価値のあるユニバーサルタイプのイヤホンだと思います。
 なぜか知らねどMDR-EX1000/800ST譲りで、イヤホンとしては音場感がそこそこあるのもナイス。
 (今回結構褒めてるな、俺)

以上