Final Audio Design Fl-DC1601SB
2009/9/19


【写真1】

真鍮製です。イヤパッドが取れているわけではなく、イヤピースも真鍮製でこのまんま耳にはめます。ヒンヤリとします。
(ゴムのイヤパッドを使いたい場合はステムを交換)
ちなみに
シャフトに2重線が彫ってある方が左チャンネルです(上の写真では向かって左がLch)。ちょっと分かりにくい気もしますので試聴の際はご注意を。


金属削り出し筐体イヤホンのエントリーモデル、だそうです。
しかしながら
エントリーと言っても5万円以上。なかなか強気のお値段ではないでしょうか。

このモデルは真鍮の筐体ですが、これ以外にステンレス筐体のモデル(Fl-DC1601SS)、およびクロム銅のモデル(Fl-DC1601SC)があり、
最も高価なクロム銅のモデルはなんと20万円だそうな。ヒュ〜(口笛)。

値段のことはひとまず置いておいて、いつもどおり粛々とまいります。

以下の感想や、測定は「真鍮製イヤーパッド」を使った際のものです。

俺イヤーによるひとくち感想:
なんといっても
まず特徴的なのはその筐体の重さ。
片方のchの筐体だけをデジタルスケールで実測すると17gもあり(ケーブル除く)。
ちなみにTriple.fi10Pro、Westone3、SE530、e-Q7、ATH-CK100(それぞれ片chで3〜4g程度)の
5つの合計の重さが概ね17gであることから、このFI-DC1601SBの重さを想像していただけるかもしれませぬ。
ただし自分の場合は外耳(耳甲介)に筐体が上手くフィットしたせいか、歩いたり階段を上り下りした程度では落ちなかったです。
遮音性は金属パッドでもゴムのパッドでも悪い部類。ただし音漏れは遮音性の悪さから予想した程で無いようにも思われ。

次に音質。
全体としてはどちらかと言えば低音寄りで、高域〜ハイエンドが控えめなためか、有り体に言わせていただくならば、若干ラジオ風のLo-Fi調に聞こえます。
低域は小型の密閉型スピーカー風で
ローエンドがストンと落ちている印象。バスドラムの迫力は割合と出ているとは思うけれど空気感が物足りないという感じ。
中域には比較的大きなクセを感じ、
ボーカルがあまり目立たず、かつ声質はやや太めで、抜けがあまり良くなくモコモコとして明瞭さが比較的良くない印象。サ行などの歯擦音は基本的にはキツさが殆どないが、不意にキツさが発生する場面がある。(「シ」の音で発生する確率高し。)
バイオリンの音色は高域の抜けが悪い点と、中高域の一部の帯域だけ目立つような不自然さを感じる。
高域、特に
5kHz以上は量が明らかに少なめな印象。アコースティックギターは野太い感じで、高域の鮮度や立体感はあまりよくない。
シンバルやスネアの音は太めで、金属的な倍音の伸びや粒状感が乏しくノッペリとした印象。


製品や音の狙いなど、全体的に
謎多きイヤホンな気がします。・・・大きなお世話な気もしますが。


【グラフ1】 Final audio design FI-DC1601SB(真鍮製イヤーパッド使用時) vs ER-4Pの周波数特性比較
(stimuli=LogChirp@48kHzSampling,64kLength)


低域は最低共振周波数(110Hzあたり)から下は概ね-12dB/octでストンと落ちてしまっている様子。まるで密閉型のスピーカーのようですねん。
このローエンドまでは伸びない低域から推測するに(最低共振周波数Fs以下の弾性制御領域で音圧がフラットにならない)、
このイヤホンの振動板はカナル型としては密閉度が比較的高くない状況で振動させているようにも思えます。
(例えばドライバ背面側の筐体のポートや、前面〜背面の圧力平衡のためのリーク穴などにより、空気の移動が比較的自由な状態なのかしらん?)
中高域は比較的クセのある特性であるようにも見える。特に2kHz〜2.5kHzのピークは人間の聴覚感度が良いこと相まってピーク感が顕著。
(4kHz超のピークと併せて散発的なサ行のキツさと関係ありと思われ)
4kHz強から8kHzにかけて-30dB程急激に音圧が低下して、高音が不足気味のようにも見える。

【グラフ2】 インピーダンス (真鍮製イヤーパッド使用時)

装着時/非装着時の周波数のシフトとインピーダンス値変化(ダンピングの変化)は、オーバーヘッド型に近い感じ。
ドライバの背圧はそれなりに緩いのかもしれませぬ。

 【グラフ3】時間領域の応答比較 FI-DC1601SB vs ER-4P
   FI-DC1601SB ER-4P 
CSD
2.46msec/30dBレンジ 

1kHz、2kHz強、4kHz強のレゾナンスはそれなりに強い様子あり。
1kHz以下において1msec程度の周期の内部反射らしき脈動も見えてます。


CSD
24.6msec/50dBレンジ
インパルス応答
 ステップ応答

自分の測定からは、周波数領域、時間領域の応答にいずれについても、特に優位そうな点は見出せませんでした。
もちろん自分の測定やオツムや感覚がマズい可能性は十分ありますが。


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