魔改造トライヤル!SPARKPLUG編
(2009/10/10新規作成)


皆様ご存知、低音大王SPARKPLUG。

「今更改造とか・・・」というご意見もございましょうが、改造して効果をそれなりに確認してみましたのでここにUPすることといたします。
(単にヒマだっただけです)




お約束!
【注意!】
メーカーの保証の対象外となってしまうため、イヤホンやヘッドホンの分解はお勧めしません。
もしも分解する場合は自己責任でお願いします。

自己責任って嫌な言葉だなあ・・・関係ないか。



【写真1】低音大王SPARKPLUGの外観。
向かって左のケーブルがグレーの方が旧型、右のケーブルが白い方が新型。・・・だったと思います。



1.SPARKPLUGのどこを改善したいのか?

低音出すぎで中高音が埋もれちゃうので、何とかして低音の量を抑えたい。

以上。そんなに多くは望みません。


2.ノーマルSPARKPLUGの俺感想

【俺イヤーによるSPARKPLUGの音の感想】

低音の量多すぎ。以上!・・・という感じですがちょっとだけ追加。

バスドラムとベースがやたらと目立ち、アコースティックギターやバイオリンなどは野太くて明瞭さが悪くスッキリしない。
(高音楽器は押しなべてこのような印象)
「迫力がある」と言えるのかもしれませぬが、個人的にはやりすぎだと思う。
2-3kHzあたりが大人しいためかボーカルもかなり太めで、相当に楽器の後ろに下がっているよう。サ行のキツさは殆ど全く無い。
最低共振周波数は約5kHzと比較的高いのだけれど、そこから上の高音は音圧が比較的急峻に落ちているようであり、
低音の量との相乗効果で、低音過多でモコモコとして音調がさらに際立っているように思う。




【グラフ1-A】KOSS/SPARKPLUG周波数特性
赤:SPARKPLUG、灰色:ER-4P


500Hz以下の低音の量がとても多い。
インピーダンスから最低共振周波数f0は5kHzで、これより高い周波数でさらに音圧が落ちている。

【グラフ1-B】KOSS/SPARKPLUG周波数特性

DC抵抗は約17Ω。最低共振周波数は5kHzであるようですが、
この他にもそれなりにいくつかのピークあり。(200Hz前後、2kHz強、6.5kHz近辺)




3.SPARKPLUGの中はどうなっているのか?

とりあえず分解して中をみてみませう。

【写真2-A】ハウジングを開けたところ

まさに、ダイナミック型ヘッドホン!っていう感じの構造です。(構造については以前の俺学習帳などをご参照ください)

@振動板の背圧を逃す役目のBass-Plugについては、表面が透明のボンドのようなもので固められており開口していない様子。
 その名のとおり、開口していると普通は低音が増加するのですが、既に閉じられていては低音の抑制には使えそうにないですね・・・
Aドライバ周囲の穴については(これも背圧を逃す)、8個のうち7個までもが既に閉塞されている様子。残る1個の穴は黒いフエルト状の音響抵抗を通して開口している様子。(下の【写真2-B】参照)



【写真2-B】ドライバをはずし、ドライバ正面から光を当てて、透過する光を背面から観察したところ
・・・要は「穴を探している」だけです。はい。


周囲の小さな穴は、青い塗料状のもので塞がれている様子。
※後で気付いたのですが、ボイスコイルを引き込む所も光が透過してますね。ここも穴が開いているのでしょうね。
 (上の写真では、下側で赤ケーブルを引き込んでいる部分が思いっきり光ってます。・・・・気付けよ俺。)



【写真2-C】ドライバをはずし正面から見たところ

上の方ちょっと振動板を触っちゃって、エッジがヘコんでますね・・・orz。すぐ直るからいいですが。



4.改造作戦

中の人の状況がある程度分かったので、魔改造案を2つ考えてみる。

魔改造@:ハウジング背面の穴を塞ぐ
 上の写真からするとドライバ自体がかなり閉塞されているので、その外のハウジングの穴を塞いでも大きな効果はなさそうですが、一番簡単だしやってみませう。

【写真3-@】魔改造@のターゲット。ハウジング背面の10個のポートを塞いでみる。

これはまだ塞いでいない図です。塞ぐのはセロテープなんかで十分です。
長期間の安定性を考慮するなら、ハウジングを分解して内側からテープを貼るなどして塞いだ方が良さそうですが、
今回は単に外側からセロテープ貼りしました。単に不精なだけですが。


魔改造A:ドライバ背面周辺部の開口している穴1個をテープで塞ぐ(上の【写真2-B】の矢印の部分の穴)
振動板の背圧が高くなり、ダンピングが効いて上手くすれば低域が減少してくれるかも・・・という期待あり。
テープで塞いだ方が元に戻せて良いのですが、元には戻せませんが安定性の点ではボンドなんかの方が良いかも。

【写真3-A】魔改造Aのターゲット。ドライバ背面(周辺部)の開口しているポート1個を塞いでみる。

こちらも単に音響抵抗(黒いフエルト状のもの)の上から適当に小さく切ったセロテープを貼って塞ぎました。
割と適当です。


5.やってみた結果

まずは
魔改造@ハウジング背面の穴を塞ぐ>

【グラフ5-@A】魔改造@:ハウジング背面の穴を塞いでみた結果(KOSS/SPARKPLUG周波数特性)
赤:ノーマルSPARKPLUG、青:ハウジング背面の穴を塞いだ場合


ノーマルとはそう大きくは変わりませんが、200Hz辺りを中心に最大5dBほどの低音減少の効果がある様子。
比較的マイルドな魔改造と言えましょう。

【グラフ5-@B】魔改造@:ハウジング背面の穴を塞いでみた結果(KOSS/SPARKPLUGインピーダンス)

ノーマル状態では、200Hz辺りを中心に非常になだらかな(Q値の小さい)ピーク(共鳴)が存在していて、これがハウジングの穴を塞ぐと押さえ込まれている様子が分かる。
よってドライバ背面ハウジングでは、概ね200Hzを中心に共鳴を発生させて音圧を増幅しているように見える。
5kHzのピークについては、ハウジング内の空気のバネの効果で周波数は僅かに上昇するようであるが、インピーダンス値の変化は小さい。


次に
魔改造A:ドライバ背面周辺部の開口している穴1個をテープで塞ぐ>

【グラフ5-AA】魔改造A:ドライバ背面の周辺部の穴を塞いでみた結果(KOSS/SPARKPLUG周波数特性)
赤:ノーマルSPARKPLUG、緑:ドライバ背面の周辺部の穴を塞いだ場合


こちらは比較的過激な変化と言えましょう。
低域は300〜500Hzあたりを中心に、ローエンドまで5〜8dB程も下がっており効果大。
しかしながら、高域の状況はそれなりに変化してしまい、特に2kHz強に大きなピークを生じてしまう点が問題。
これを聴覚上良しと出来るか否かで、魔改造の採用可否が決まりそうな気がします。・・・まあちょっとやり過ぎかも。


【グラフ5-AB】魔改造A:ドライバ背面の周辺部の穴を塞いでみた結果(KOSS/SPARKPLUGインピーダンス)

こちらも低域は200Hz近辺を中心にダンプされている様子がインピーダンスからも見える。
特徴的なのは2kHz超に大きなピークが発生している点で、ドライバ背面ポートを塞ぐと何らかの原因で強い共鳴が発生してしまう様子。
(位相においても明確に共鳴が発生している様子は明確)
5kHzの共振周波数はわずかに低下し
(※)、ピークが小さくなり若干ダンピングが効いている様子が伺える。

(※)閉塞すると空気バネで周波数が高くなりそうな気もするのですが、正直なところ自分にはちょっと理由が分からないです。
  他でも良く同様の事が起きるんですよね・・・残ったどこかの穴によるヘルムホルツ共鳴では無いかと憶測してみたりするんですが・・
  ・・うう・・どなたか教えてくださいませ。



6.そんなことやっちゃって・・・音悪くなってませんか?

魔改造@Aいずれも
振動板の背圧を勝手に無茶して高めてしまってますので、
もしかすると振動板が変形して歪みや、過渡応答が悪くなってしまうことが十分考えられます。
歪みと、インパルス応答の波形を確認して見ましょう。

   歪み インパルス応答  CSD(2.4msec、30dBレンジ)  CSD(24msec、50dBレンジ) 
 ノーマル
 魔改造@
ハウジング背面の穴を塞ぐ
 魔改造A
ドライバ背面の周辺部の穴を塞ぐ
         


このグラフから

歪みについて:
魔改造Aの2kHz強の歪みが大きい。

インパルス応答/CSD:
魔改造Aでは2kHz、4.5kHz辺りの共鳴が強く残っており、過渡応答は魔改造@の方がマシと言えそう。



7.俺暫定結論

とりあえず魔改造@がオススメ・・・か?
(弱気)

「まあそれなりに低音減ってる気がするね・・」ってくらいで、それほど大きな効果ではないし
これでもイコライザーで低域落とさないと(Bass Reducer等)まだ低音過多な気がしますが、
あんまりイジると副作用も多いので、あまり多くは望まずにこの程度で留めるのが吉かも。

個人的には魔改造Aも、ノーマルには無かったボーカルが少し前に出てくる点はグーだと思いますが、お好みでありましょう。

っていうか、
ナイズなイコライザーを搭載しているDAPをお使いの方は、そもそも魔改造とかしなくてもいいかも



といったように、なんだかとっても尻つぼみな結果で終わる次第です。


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